相続が発生してからでは遅い「見えない資産」。仮想通貨やネット銀行などのデジタル資産をめぐる相続トラブルが増えています。備えるべきリスクとその対策を解説します。
1. 背景と現状
仮想通貨やネット銀行口座といった「デジタル資産」は、近年ますます保有者が増加しています。しかし、故人が保有していたことを家族が知らなかったり、アクセスできなかったりすることで、相続手続きに支障が出るケースが急増しています。
特に仮想通貨は価格変動が大きく、評価や申告が難しい資産のひとつです。デジタル資産の存在を把握していなかったために、相続税の申告漏れとなるケースも見られます。
2. よくあるトラブル事例
- 相続手続き完了後に仮想通貨の存在が発覚し、遺産分割協議をやり直す羽目に。
- ネット銀行の口座に多額の預金があったものの、相続人が気づかず未申告となり、加算税を課された。
- 仮想通貨のウォレットにアクセスできず、資産が事実上凍結状態に。
3. トラブルが起きる原因
- 情報の不透明さ: デジタル資産は紙の通帳のような形がなく、家族が把握しにくい。
- パスワード管理の不備: 故人しか知らないID・パスワードにアクセスできず、引き出し不能。
- 申告評価の難しさ: 相続発生日時点の仮想通貨の価格評価が困難。
4. 事前にできる対策
デジタル資産の相続トラブルを防ぐためには、次のような準備が有効です。
- 資産リストの作成: 所有しているネット銀行口座、仮想通貨、電子マネー、ポイントなどを一覧にしておく。
- パスワードの管理: 信頼できる方法でログイン情報を保管。パスワード管理アプリの活用も有効。
- 遺言書に明記: デジタル資産の存在や承継先について、遺言書に記載しておく。
- 専門家に相談: 税理士・司法書士・行政書士などに相談し、評価や手続きをサポートしてもらう。
5. まとめ
デジタル資産は目に見えにくく、把握されないまま埋もれてしまうことも少なくありません。結果として、遺産分割協議のやり直しや、相続税の申告漏れによる追徴課税といったトラブルにつながります。
「デジタル資産は見えにくい」という前提に立ち、元気なうちに資産の棚卸しと承継方法を整理しておくことが、家族の安心にもつながります。
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