相続税の申告において、財産の申告漏れをめぐる税務調査が近年強化されています。国税庁は毎年、相続税の申告内容について調査を行っていますが、その中で申告漏れが見つかるケースは少なくありません。特に、現金や預金、土地などの財産については、申告漏れが発生しやすい項目として注意が必要です。
相続税調査では高い割合で申告漏れが見つかる
国税庁が公表している資料によると、相続税の税務調査では一定の割合で申告漏れが指摘されています。これは、故人が保有していた財産を相続人がすべて把握していない場合や、評価方法の誤りなどが原因となることが多いためです。
また、税務署は金融機関の取引履歴や不動産の登記情報などを確認することができるため、「分からないだろう」と思っていた財産でも、後から把握されるケースがあります。
特に注意が必要な財産
相続税の申告漏れが起きやすい財産として、次のようなものがあります。
相続税の税務調査では、次のような財産が重点的に確認される傾向があります。特に「誰のお金なのか」という実態が重視されるため、名義だけでは判断されません。
- 名義預金
家族名義の口座であっても、実質的に被相続人のお金と判断される場合は「名義預金」として相続財産に含まれることがあります。 - そのお金は誰が稼いだものなのか
- 通帳や印鑑は誰が管理していたのか
- 口座のお金の出し入れを実際に行っていたのは誰か
- タンス預金
自宅に保管していた現金も、被相続人の財産であれば相続税の対象となります。 - 海外資産
海外の銀行口座や海外不動産なども、日本の相続税の対象となります。
税務署が確認するポイントは主に次の3つです。
たとえば、次のようなケースは名義預金と判断される可能性があります。
父親が子ども名義の口座を作り、毎年まとまった金額を入金していた。
しかし、通帳と印鑑は父親が保管しており、子どもはその口座の存在をほとんど知らなかった。
この場合、口座の名義は子どもでも、実質的には父親が管理していたと判断され、相続財産として扱われる可能性があります。
税務署は金融機関に対して調査を行い、過去の入出金履歴を確認することができます。そのため、名義だけで判断するのではなく、実態をもとに厳しくチェックされます。
「現金だから税務署には分からない」と思われることもありますが、実際には通帳の履歴から把握されるケースが少なくありません。
税務署は金融機関の口座履歴を調査する権限を持っており、被相続人の通帳から多額の現金が引き出されている場合、その資金の行方を確認します。
例えば、次のようなケースです。
亡くなる数年前から、銀行口座から毎年100万円程度の現金が引き出されていた。
しかし、そのお金の使い道が生活費としては説明できない場合、税務署は「自宅に現金として保管されていた可能性」を疑います。
実際の税務調査では、自宅の金庫や保管場所を確認したり、家族への聞き取りを行うこともあります。その結果、タンス預金が見つかり、申告漏れとして指摘されるケースもあります。
以前は海外資産は把握されにくいと言われていましたが、現在は各国の金融情報交換制度により、税務署が海外口座の情報を入手できる仕組みが整っています。
代表的なものが「CRS(共通報告基準)」という制度です。これは各国の金融機関が外国人の口座情報を自国の税務当局に報告し、その情報が各国の税務当局と共有される仕組みです。
例えば、日本に住んでいる人が海外の銀行口座を保有している場合、その口座情報は日本の税務当局に提供されることがあります。
そのため、海外口座であっても税務署が把握することは十分に可能です。海外資産も相続財産として適切に申告する必要があります。
申告漏れがあった場合のリスク
相続税の申告漏れが税務調査で指摘された場合、本来納めるべき税金に加えて、延滞税や加算税が課されることがあります。特に、意図的な隠ぺいと判断された場合には、重加算税が課される可能性もあります。
このような追加の税負担を避けるためにも、相続財産を正確に把握し、適切に申告することが重要です。
相続税申告では「財産の把握」が重要
相続税の申告で最も重要なのは、被相続人の財産を正確に把握することです。預金、不動産、有価証券などのほか、現金や家族名義の口座なども含めて確認する必要があります。
相続が発生してから慌てて調べるのではなく、生前のうちから財産の整理を行っておくことで、将来の相続手続きがスムーズになる場合もあります。
まとめ
相続税の税務調査は今後も継続して行われると考えられます。特に、名義預金や現金などの見えにくい財産は申告漏れが起きやすいため、注意が必要です。
相続税の申告では、財産の把握や評価方法など専門的な判断が必要になる場面も少なくありません。不安がある場合は、早めに専門家へ相談することが、トラブルを防ぐための大切なポイントとなります。