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教員の給与は高額にすべき!

■教職員は人気がない

 ご承知の通り、「103万円の壁」問題が大きな話題になっています扶養範囲内で働く主婦や学生にとっては、家計を助け、生活を豊かにするチャンスになります。
しかし最低賃金が上がっている現状では、あっという間に103万円を超えます。働きたいけど働けない。しかし103万円が178万円に引き上がれば1年間アルバイトが出来ます。生活費も潤います。企業側も、年末が近づくたびに労働時間を調整する人が続出していた問題から解放され、安定した人員確保が可能になり、大変助かるでしょう。ただし、地方自治体の財源減少が懸念されている点も課題です。どのように着地するのか、大いに注目しています。

 103万円問題の陰で、教職員の処遇改善問題も小さく取り上げられています。マスコミにとっては「売れるネタ」ではないので仕方ありませんが、個人的には103万円問題よりも重要な課題だと考えています。なぜなら、国家の礎は「人」であり、人を育てなければ強靭な組織を作ることはできないからです。
どんな勝負でも、プロの人数と初心者の人数の比率で結果が決まります。例えば、サッカーの試合で、Aチーム(プロ80%)とBチーム(初心者90%)が戦うとしましょう。言うまでもなくAチームが圧勝します。しかし、Bチームが初心者の80%を育て上げてプロを70%にすれば、Aチーム(プロ80%)対Bチーム(プロ70%)となり、勝負の行方はわからなくなります。稚拙な例かもしれませんが、どの組織でも人材育成が必須であり、その力の差が組織の力の差になります
 ここで話を教職員に戻します。教職員志望者は激減し、小学校教員の採用倍率は平成12年の12.5倍から令和5年の2.3倍に下がっています。教員は就職先として人気がありません。その理由は、皆さまもご存じの通り、長時間労働や精神的負担が大きいためです。それに見合う給与水準が相対的に低いと感じられていることもあります。
もちろん給与水準だけでなく教育制度全体の見直しも必要です。昭和時代には「尊敬される先生」が多かったため憧れの職業でしたが、令和時代では社会的評価が低下していると感じる人が増えています。

■人は学んで成長する

 最近のビジネスセミナーでは「ハラスメント対策」や「Z世代の育て方・活かし方」といったテーマが人気です。それだけ、この問題に悩む人が多いということです。令和時代の部下指導は昭和時代と異なり、非常に慎重にならざるを得ません。ミスを厳しく指導しただけでパワハラとされ、女性を褒めて伸ばそうとするとセクハラと受け取られることがあります。さらに、働き方改革による休日の増加もあり、指導が一層難しい時代です。
ただ、このような環境でも自律心があり成長意欲の高い人材が集まる会社であれば発展していきます。一方で、「時間が経てば給料がもらえる」と思っている人ばかりの会社では、利益を出すことは難しいでしょう。パフォーマンスを向上させるためには、学び、実践し、反省することが不可欠です。できないことをできるようにするには、優れた指導者から教わるのが最短の道です。ハラスメントやZ世代の対応にも優れた指導者がいる会社は強い組織になります。
 国家の基盤となる教育においても、指導力ある教員は欠かせません。この原則は、日本全体にも当てはまります。強靭な国家を作るためには、国民一人一人のパフォーマンスが重要です。そして、その基礎は幼少期から高校生までの過ごし方にあります。この時期に重要となるのが、小中高校での生活です。子供を成長させる力を持った教員が多ければ、自律した子供たちが増えるでしょう。しかし、時間が経てば給料がもらえる教員ばかりの環境で育った子供たちは、どうなるでしょうか。この状況が続けば、日本の国力は低下する一方です。経済的、文化的発展は望めません。

■長期利益VS短期利益

 財務省は、教職員の給与を引き上げる前に外部人材の配置やデジタル化による業務効率化を進めるべきだと主張しています。また、予算も文部科学省の既存予算内でやりくりすべきだとしています。それ自体は正論ですし、企業でも同じことが言えるでしょう。
 しかし、私は財務省の主張が「部分最適化」に過ぎないと考えます。20年後、50年後の人口減少が著しい日本を見据えたとき、自律的で成長意欲の高い子供たちをどう増やしていくかが、諸外国に勝ち抜くための最重要課題です。そのためには、教員の質と量を増やすことが必須です。しかし、残念ながら令和時代に教職員は人気がありません。パフォーマンスの高い大学生が、給与の高い企業に就職するのは当然です。一般論として、パフォーマンスの高さと給与水準は比例します。国力を上げるためには、教職員の給与を大幅に引き上げ、優秀な人材をより多く集めることが日本全体の最適化につながります。もちろん給与水準だけでなく教育制度全体の見直しも合わせて改善が必要です。
 
 問題は、長期的には理にかなっていても、短期的に見ると予算が増えるばかりで、成果が数十年先まで見えないことです。しかし、今教員の改革をしなければ、日本の未来はありません。
 長期利益と短期利益は相反します。これは私たち商売人にも同じことが言えます。例えば、最低賃金の急上昇による経費増加に苦労していますが、長期利益を考えれば、人口減少が進む中で高い賃金で雇用を確保しなければ企業も存続できません。しかし単年度でみれば赤字になります。このバランスをいかにとるのか、残念ながらそれが分かれば苦労しません。ただ長期利益が一番大切であることは間違いないです。